「仕事の範囲を限定するのではなく、人間を深く理解し、『人に対する刺激と反応の設計』と自らの仕事を再定義して、もっと広範に経営に関わっていきたい」と語るのは、コダック、コカ・コーラ、ウォルマートなどでマーケティング要職を歴任してきたドミノピザジャパン株式会社の富永朋信氏。

 2017年6月14-15日(水・木)に行われる マーカスエバンズ CMO Japan Summit 2017 にて議長をお務めいただく富永氏にお話を伺いました。

後進のマーケターを育成するために心がけていることは

マーケティングは経済学、心理学、社会学、メディア論などいくつかの学問のハイブリッドです。マーケティングのコースを習うと色んな分野について知った気になるのですが、実は各分野の表面しかなぞっていないのが実情です。そうではなく、どこが自分の強みで興味の対象なのか、自問自答して掘り下げていける人は良いマーケターになる素質があります。ですから後進に対しては、日ごろから自分の強みを深掘りする“T型”の知識の持ち方をするように言っています。
また、マーケターは新しいもの好きが向いていると言われがちですが、私は「なぜこうなっているのか」「この人は何を考えてこうしたか」と物事の事象の裏に隠れている因果関係を類推するのが好きな人が向いていると思っています。マーケティングは人に何かを語りかけて認知形成したり、行動変容をしてもらったりするものなので「人間の理解」が必須であり、その化学反応を設計できることがマーケターに必要なスキルです。それを身につける早道は、自ら進んで勉強すると同時に、普段のフィールドワークの中で「人がどう考えるか」を考え続けることだと考えています。

これからマーケティングはどのように変化していくか。また時代が変化しても変わらないものは

マーケティングに限らず昨今の経営課題として、アジリティ(機敏性)をもった経営、アクションラーニングベースの経営が必要と言われています。つまり、何かアイデアがあれば小さくやってみて、それが成功すれば大きく取り入れていく方式。やってみてGO/NO GOを判断するためには、やるパターンとやらないパターンを設定し、どの基準でどのパターンが成功かの基準づくりができる人間が必要です。例えばピザのプライシングを考える時、それぞれの値段の差をどうするか、サイズをどうするか、デリバリーとテイクアウトをどう分けるかなど、色んな変数があり、それぞれに意図を込められます。しかし無限パターンのテストは出来ないので「消費者に何を聞けば効率的に何がわかるか」というベースで考えてテストを設計する知的で高度なスキルが必要になります。今後、更にこのようなスキルが必要なマーケティング業界になってくると思います。
また、近年マーケティングはより深く経営と関わってきています。90年代はCMのクリエイティブや放送電波の買い方、2000年代になって多様化するメディアへの対応と対個人のコミュニケーション、そして今は大量のデータを元に意思決定の質・スピード向上をサポートするかという風にマーケティングの重要性も深みも変わってきています。私はマーケティングは経営だと思っているので、自分の仕事の範囲を消費者コミュニケーションやメニューを考えることに限定するではなく、人間を深く理解し「人に対する刺激と反応の設計」と自らの仕事を再定義して、もっと広範に経営に関わっていきたいと考えています。
逆に、今後も変わらないのは「人間の性質」です。時代が変わり、WEBやSNSが出てきても、消費のプロセスは消費者エンゲージメントそのものである、というのは、人間がものを買い始めたときからずっと変わらない習性です。その心の変遷を見失い、消費者は変わると言い始めると施策が上っ面になっていくのではないかと思います。

今後、取り組んでいきたいこと

マーケター、特にCMOは結構孤独です。経営層はフィルタリングされた情報をベースにしてしまい、消費者が見ているリアリティよりも自社のことを2割増しで良く思っているものです。その人たちに効果のあるキャンペーンのアイデアをもっていくと、なぜ会社のことを悪く言うのかと言われます。一方、妥協して効果がないものをつくっても、評価が下がって退出を余儀なくされます。毎回戦うか、妥協してアウトするかの2つに1つ。非常に孤独な職務です。そこで元気を得られる良いチャネルが「他のマーケターと話すこと」です。マーケター同士は気持ちがよくわかるので、人がやっている良いアイデアを素直に褒めたり褒められたりして元気になる場をもっと充実させていきたい。CMO Japan Summitもまさにその1つです。
もう1つのやりたいことは「理論の進化」です。マーケティングの理論やフレームワークはたくさんありますが、どれもどこかの業界や会社を想定したものであって、ユニバーサルに語れるものではありません。それができるメタレベルの理論をつくりたい。それは学問の世界にいる人たちよりも、心ある実業家が集まってできるものだと思っています。

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2017年6月14 ー 15日(水・木)にホテル椿山荘東京にて行われる マーカスエバンズ CMO Japan Summit 2017 で議長をお務めいただく富永朋信氏に、後進のマーケターの育成、今後のマーケティング業界の変化、また今後取り組んでいきたいことについてお話を伺いました。

富永 朋信 氏

ドミノピザジャパン株式会社  執行役員 CMO

“「人に対する刺激と反応の設計」と自らの仕事を再定義し、広範に経営に

関わっていきたい ”

過去のご聴講者
  • ピーチ・ジョン  マーケティング本部 取締役  本部長
  • ユナイテッドアローズ   事業支援本部  デジタルマーケティング部部長
  • ボッシュ  コーポレートコミュニケーション部  ジェネラル・マネージャー
  • クノール食品 代表取締役
  • アサヒビール デジタルマーケティング部長
  • ロッテ マーケティング統括部 デジタルマーケティング部 部長
  • ライオン  宣伝部  部長

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CMO Japan Summit  について

今年で7回目となるCMO Japan Summit は、マーケティングの第一人者であるご講演者・ご聴講者・ソリューションプロバイダー企業が集結し、基調講演・プレゼンテーション・パネルディスカッション、One-to-one Meetingsのほかに、コーヒーブレイク・ネットワーキングランチ・カクテルパーティーなど交流の時間も多数挟みながら、マーケティング課題やビジネスチャンスについて討議する、シニアマネジメント層のためのビジネスイベントです。

Copyright © 2017 Marcus Evans. All rights reserved.

今年のご講演者
  • ドミノピザジャパン CMO  富永朋信
  • Apple  元クリエイティブディレクター ケン・シーガル
  • オイシックス CMO 西井敏恭
  • メガネスーパー デジタル・コマースグループ ジェネラルマネージャー 川添隆
  • Peach Aviation 執行役員 チーフチャネルオフィサー COO  森井理博
  • スターバックスコーヒージャパン  デジタル戦略本部 デジタルマーケティング部 部長  長見 明
  • IDOM マーケティングチーム チームリーダー 中澤 伸也
  • エイチ・アイ・エス  本社オープンイノベーション事業部  部長  村松知木
  • インテリジェンス  マーケティング企画統括部エグゼクティブマネージャー 木下学
  • パルコ メディアコミュニケーション部 山口豪

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2017年6月14 - 15日 (水・木)

ホテル椿山荘東京

お問い合わせ先:

マーカスエバンズ  坂井智華 chikas@marcusevanskl.com

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